弁護士コラム

2018.02.01更新

東京都池袋,城北法律事務所の弁護士結城祐(ゆうきたすく)です。

今回は,判決をもらったのに,相手が任意に支払ってくれないとお困りの方に強制執行の概要についてお話し,最近の預金債権の差押えの流れについてお話したいと思います。

1 強制執行とは

金銭の支払いや建物の明け渡し等が記載された債務名義(判決,和解調書,調停調書等)をもらったのに,相手が任意に支払いや明渡しに応じないことが多々あります。せっかく勝ったのに意味ないなと途方に暮れるのですが,そのような時には,その債務名義に基づいて強制執行(差押え等の手続)の申立てをすることになります。

2 強制執行の種類

 ①不動産・自動車
  相手の不動産(土地・建物)や自動車を差し押さえて売却し,その代金で債権を回収する。

 ②動産
  相手の家財道具や貴金属等を差し押さえて売却し,その代金で債権を回収する。

 ③債権(相手方の給料債権や預貯金債権等)
  相手の給料・預貯金等を差し押さえて,それを雇い主や銀行等から取り立てて,債権を回収する。

 ④建物明渡し等
  執行官が強制的に不動産の明渡しや動産の引渡し等を行う。

3 メガバンクへの預金の照会

 このように債務名義をもらったにもかかわらず,相手が任意に支払わない時には,相手の財産に対して強制執行をしなければなりません。
 しかしながら,差押えを行う相手の財産は,裁判所が探してくれるわけではなく,自分で探す必要があります。
 この点,相手が不動産(土地・建物)や高級車を所有しているのであればいいですが,そうでない場合には,相手の債権(給料や預金)を差し押さえなければなりません。
 預金についていうと,強制執行をするためには,金融機関の口座の支店までを特定する必要があるとされてきました(最高裁平成25年1月17日決定)。
 ところが,相手の預金口座の支店までは分からないケースが多々あり,その場合でも,従来金融機関は顧客の守秘義務を守るという理由で口座の開示には消極的でした。
 そのため,裁判で勝訴し,判決をもらっても,相手の勤務先や自宅付近の銀行支店口座をとりあえず差し押さえて見たり,それも叶わず泣き寝入りをしなければならない方もいらっしゃいました。
 こうした状況の中,2017年1月頃の報道によると,次の銀行からは,預金債権の差押えのため,本店または担当部署に対して,弁護士法23条の2に基づく照会をすることで,預金口座の有無,支店名,口座科目,預金残高(回答日時点)の情報が得られることになりました。
 ①みずほ銀行
 ②三井住友銀行
 ③三菱東京UFJ銀行
 ④ゆうちょ銀行(取引履歴も開示可能)

 上で記載した通り,3メガバンクとゆうちょ銀行への預貯金の照会は,弁護士法23条の2に基づく照会が必要なので,判決で勝訴しても相手から金銭の支払いが任意になされずにお困りの方は,是非ご相談ください。
 なお,照会の際には,債務名義の写しの添付が必要となります。

4 将来の民事執行法改正の可能性

 そもそも現在の民事執行法が,せっかく裁判で勝訴したとしても差押えが効を奏しない運用になっている点に問題があるように思います。
 守秘義務の問題もあるかと思いますが,条件を付し,他の金融機関でも債務者の口座情報の開示が進むように,法改正がなされるべきと思います。
 実際に,法務省も,養育費未払いの問題を受けて,裁判所が債務者の口座情報を金融機関に照会できる制度を新設する方針という報道がありました。
 今後を見守りたいと思います。

5 さいごにー強制執行の申立て前に必要なこと

 ①債務名義が,判決,和解調書,認諾調書,調停調書,調停に代わる決定,和解調書の場合
  ア 債務名義の送達申請(判決と調停に代わる決定の場合は不要)
  イ 債務名義の執行文付与申請
    債務名義の送達証明申請

 ②債務名義が,少額訴訟事件の少額訴訟判決,支払督促事件の仮執行宣言付き支払督促の場合
  債務名義の送達証明申請


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城北法律事務所 弁護士 結城 祐(ゆうき たすく)
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投稿者: 弁護士 結城祐